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2022/09/15

治験バイトは危険?リスクと安全性について

治験とは、開発中の医薬品の有効性や安全性を調べるために、実際に人に投与をする臨床試験の事をいいます。

治験で試される治験薬は、試験段階において国から承認を受けているわけではないため、参加を検討されている方の中には「危険なのでは?」と不安に感じることもあるでしょう。

また、治験に参加する事で支払われる謝礼金も一般のアルバイトと比べて高額であるため、治験の安全性に疑問を抱く方もいるかもしれません。

そこで、本記事では「治験バイトは本当に危険なのか?」という疑問について、治験バイトのリスクと安全性をふまえて詳しく解説します。

臨床開発と治験の重要性について

病院で処方される薬やドラッグストアなどで販売されている医薬品は、厚生労働省から認可を受けているため人への使用が認められています。

これらの医薬品が世の中に出回るまでには、安全性と有効性を確認・検証するために医薬品開発に長い年月がかけられています。

医薬品の開発において、製薬会社は新薬の研究に約2〜3年費やします。

さらには試験管の中や動物を用いた非臨床試験で薬の吸収過程や効果、また安全性や毒性の有無などを調べるために約3〜5年を要しています。

そして、新薬の承認申請に必要なデータを集めるために、最終的に人へ投与する臨床試験が開始されます。

治験とはこの承認申請を最終目的とした臨床試験の事を指し、薬を安全に人に投与するうえで必要不可欠なプロセスとなります。

治験は厚生労働省によるGCP省令が定めたルールに基づき、モニタリングや監査などによって厳しく管理が行われているなかで実施されています。

GCP省令については『こちら

治験中に副作用が起きる可能性もありますが、その副作用もまた治験で収集する重要なデータのひとつです。これらのデータをひとつひとつ正確にまとめる事で、医師が薬を処方する際の指針を決める事にも役立っています。

治験について詳しくは「こちらの記事」もご覧ください。

治験は危険?死亡事故はあるの?

治験を行う際は薬事法や厚生労働省が定めるルールに則り、製薬会社は医療機関と協力して治験を実施します。

過去に国内外で実施された治験のなかには、治験によって重篤な副作用や障害、死亡事故が起きてしまった例はあります。

しかし、そのほとんどは海外で起きたものであり、日本国内では確認されている大きな事故はこれまで1件のみです。

どのような事例があったのか、ご案内します。

過去に起こった事例

■2006年イギリスで起こった事例

当時大きなニュースにもなったのが、イギリスで2006年に起きた「TG1412」という薬による薬害事故です。

「TG1412」とは、慢性関節リウマチや白血病などの治療薬として期待されていた薬で、人への投与の第一段階となる治験に参加した男性8名のうち、6名が多臓器不全や呼吸困難などの症状を起こしてしまいました。

後に6名中1名に細胞が壊死する症状が現れ、手指を切断するという痛ましい結果を招いています。

このような薬害の原因には、薬を投与する量と投与する速度が関係しているとされています。

■2016年フランスで起こった事例

不安神経障害などの治療に期待されていた「BIA10-2474」という薬の治験において、

治験参加者に脳死や神経障害など重篤な薬害が起きました。

これは、医療ミスにより投与量を多くしてしまった事で、血中濃度が上がってしまい重篤な副作用を招いてしまったのです。

■2019年日本で起こった事例

日本における治験では、2019年にてんかん治療薬の治験において退院後に男性が電柱から飛び降り死亡するという痛ましい事故が発生しました。

この事故が起きる前に使用されていた治験薬は、似た薬に自殺を企てる副作用があったため、治験との因果関係は否定できないという判断により国内初の治験による死亡事故とされています。

しかし、この死亡事故をのぞくと、日本における治験での重篤な副作用は報告されていません。日本での治験は海外と比較すると、より安全に実施されていると考えられるでしょう。

治験のリスクについて

治験は過去何十年と実施されており、その間に国内で報告された治験による重篤な副作用は、2019年に起きた死亡事故以外には幸いにも報告されていません。

開発中の新薬を投与する上では、安全性を確認し投与量や投与速度などを適切に管理し、製薬会社は医療機関と協力し、事故が起きないように万全な体制を整えて治験を実施しています。

しかし、治験では未承認となる薬を投与するため、副作用による健康へのリスクが全くないとは言いきれません。

治験参加に伴い想定される副作用にはどのような症状があるのか、また副作用などに対し製薬会社はどのように説明を行っており、これを「インフォームド・コンセント」といいます。

インフォームド・コンセントとは

治験開始に伴い、製薬会社はGCP省令に基づき治験前に必ず説明会を行います。

説明会では治験の目的や治験薬の特徴・効果のほか、治療の実施方法や起こりうる副作用などについて医師から詳しい説明があります。

これを「インフォームド・コンセント」といい、治験参加に伴う同意手続きを行う過程で必須の事項とされています。

このインフォームド・コンセントによって説明される副作用の多くは、非臨床試験の段階でみられた軽度な副作用や薬の特徴から想定される副作用です。

副作用の代表例としては頭痛や吐き気、怠さ、めまい、下痢などが挙げられます。

また、これらの軽度な副作用だけでなく、治験参加に伴い被験者にとって起こりうる有事事象(意図しない疾病やその兆候となる症状など)についても、説明会ではリスクをふまえて説明が行われます。

有事事象は治験薬との因果関係を問わず被験者にとって好ましくない症状を指し、その中には生命を脅かすような重篤な有事事象も含まれています。

このような有事事象が発生した場合、治験を実施する医療機関は直ちに治験を中止するとともに適切な処置を行う事が治験のルールとして定められています。

しかし、現時点では過去に実施された治験でこのような重篤な有事事象は報告されていないません。

100%可能性はないとは断言できませんが、安全に十分配慮した体制のもと治験は実施されているといえます。

なお、インフォームド・コンセントに基づき説明を行ってもらうなかで、治験に対するリスクに不安を覚えた場合は、参加を取りやめる事も可能です。

治験参加はあくまでも被験者の意思によって参加を決めるものであり、製薬会社から勝手に参加を決められる事はありません。

安全に取り組むための制度・補償について

上記でも解説してきたとおり、治験の実施には被験者の安全を第一に、国に定められた治験のルールに基づいて行われています。より安全に治験を行うために、製薬会社では以下のような取り組みがなされています。

治験は3段階に分類される(第1相試験~第3相試験)

被験者のリスクを減らし、薬の安全性や有効性を正確に立証する事を目的に、治験は3つのステップをふんで進められます。

3段階に分けて実施される治験は、「第1相試験」「第2相試験」「第3相試験」と呼ばれています。簡単にまとめてみました。

「第1相試験」

少人数となる健康な成人に対して、ごく少量から少しずつ治験薬を投与し効果を測定する試験を行います。

「第2相試験」

新薬が効果を現すと期待される少人数の患者に対し、病気に対する効果や副作用の有無、適切な薬の使用方法などを調べる試験を行います。

「第3相試験」

最後に、多数の患者を対象に、新薬の有効性や安全性、治療法などを最終的に確認するための試験として実施されます。

これらのステップをふんで薬の効果や安全性などを確かめる事により、初めて厚生労働省に新薬として承認申請が行えるようになっています。

補償について

治験参加に伴う補償制度は、基本的に治験との因果関係が認められる健康被害に対して、「医療費」「医療手当」「補償金」の3つの補償を行うという内容となっています。

医療費は治験で生じた健康被害の治療費の事で、医療手当は治療に伴い通院をする際に発生する交通費や入院に伴う雑費などを指します。

また、補償金とは補償する側となる製薬会社の規定によって定められた金額の補償金が被験者に支払われるというものです。

なお、補償の対象となる有事事象については、医師や製薬会社が因果関係を判断するものであり、なかには補償対象だと思っていても対象外とされるケースもあります。

一般の方にとっては治験中に起きた副作用が治験薬と関係があるのかを判断するのは非常に難しく、治験中に補償対象なのか迷った場合は治験コーディネーターに相談してみるのもよいでしょう。

まとめ

新薬の開発に欠かせない治験は、被験者にとって必ずしもリスクがない試験とは言えません。しかし、治験は被験者の安全を第一としてさまざまなリスクを想定し、詳細なルールに則って実施されています。

日本国内では年間100件前後の治験が毎年実施されていますが、重篤な副作用が報告された例は非常に少なく、想定される健康へのリスクとしては軽度な副作用となります。

治験参加を検討する場合は、起こり得る副作用をよく確認して参加しましょう。