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  • 豆知識

2021/03/22

治験バイトだけで暮らしていける?

治験バイトのプロがいるらしい

治験で生計を立てるプロがいる(いた)ようです。書評家の田中大輔氏おすすめのノンフィクション「職業治験」の著者がその人、八雲星次さん。
まだ開発段階の「新薬(くすり候補)」を飲んで飲んで飲みまくり、データをとるために採血の連続。裏ルートでの治験、海外での治験をはしごして、7年間を治験バイトだけで暮らしていた。合計入院日数365日、採血数900回、報酬金額は1000万円。そして、その結末は・・・という内容です。

新薬を世に送り出すためには、人に使ってデータを取る治験(臨床試験)が必須です。もちろん治験には、長年を費やして、何百回となく実験・動物実験を繰り返し、安全性を確かめた「くすり候補」だけが使われます。
たとえば治験の第1段階(第1相試験)では、健康な成人にくすり候補をごく少量投与してデータを取ります。このステージは薬効を調べるのではなく、安全性の確認がメインとなります。重い副作用がないか、くすりの候補が体のどこにどのルートで届いて、どれくらいの時間で体外に排出されるのか、などをくすりの量を少しずつ変えながら調べていきます。

こうした治験は高収入が得られる「治験バイト」として、近ごろ人気ですが、それだけで生計を立てているのが「治験のプロ」と呼ばれる人たち。次々と治験を渡り歩いて、協力金という名目で支払われる負担軽減費で生活をするのだとか。
たしかに、入院タイプの治験に参加した場合なら20日ほどの入院で50万円近い負担軽減費が手に入ることもあります。
入院生活は、外出禁止、間食禁止、禁煙・禁酒など規則や制限はあるものの、検査時間以外は基本的には自由です。娯楽設備が整っていて、マンガも雑誌も読み放題、テレビもネットもゲームもOK。また、きちんと栄養価を計算したおいしい食事が毎日3食出てきます。短時間労働で、ラクして、しかも高額なお金がもらえる…、こんな良い話はありません。

それNG!治験ルールは守らないと

治験バイトだけで生計が立てられるか、ということですが。
金額面だけで言えばYESかもしれません。
もしも高条件の入院治験に、最高のローテーションで参加できたなら…。20日から30日の入院タイプで(年間2回から2.5回参加が可能)、負担軽減費は年額100万円から150万円程度になります。個人によって暮らしにおける価値観や必要とする金額が違うため、一概には言えませんが、年収150万円程度あれば生活できなくはありません。
(ただし、収入が48万円超え、扶養家族なら103万円を超えるときは、確定申告をする義務が出てきます。場合によっては税金を納めることになります。)

しかしながら、「職業治験」の著者のように、暮らしていくために次から次へと治験を渡り歩き、「治験のプロ」を生業にするのは、「それダメ!」。
なぜなら、治験バイト参加への禁止事項として「過去4カ月以内に治験や献血を行っている方」という一文があるからです。

何よりも治験モニターの安全・健康を守るため

一度治験バイトをすれば、少なくとも4カ月は間を空けなくてはいけません。これを休薬期間といい、治験モニターの体の安全・健康を守るために、国が定めた必須事項です。
たとえば治験中に副作用が起こった場合、前回のくすりの影響なのか、今回のくすりが原因なのかを特定するために時間がかかり、適切な処置を素早く行えないというリスクもあります。
前回の治験薬がすっかり排出されるまで(約4カ月)、次の治験モニターにはなれません。

正確なデータ収集の妨げになるから

治験の本来の目的は「新薬をつくる」ことにあり、治験バイトはその手助けをすることです。長い年月をかけて積み重ねた基礎研究や動物実験によって、新薬の効果や副作用を予測していても、別の薬が体内に残っている治験モニターに投与した場合は、本来得られるはずのデータ収集が困難に。
悪くすれば承認の遅れが出たり、発売後に予想外の大規模な健康被害が出たりすることにもなりかねません。(状況によっては治験モニターが損害賠償を請求されることも考えられます。)
治験バイトをするなら、高額というところだけではなく、治験の本来の目的をしっかりと認識し、適切な休薬期間をとってから次の治験に参加するようにしましょう。
ルールさえ守れば、意義のある条件の良いアルバイトだと言えます。