インフルエンザワクチンの働きは?
新型コロナで、ワクチンの重要性を再認識
こんな時期にインフルエンザの話?と思われるかもしれませんが。新型コロナワクチンの接種や有効性、副反応について世界中が注目している今、一番身近なインフルエンザワクチンについて考えてみました。
インフルエンザの発症は、インフルエンザウイルスが口や鼻、眼の粘膜から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この感染のながれは新型コロナウィルスも同じです。
新型コロナとの違いは、インフルエンザは飛沫感染と接触感染に加えて空気感染を起こす可能性があることです。
身体の細胞の中でウイルスが増えると、数日の潜伏期間(2日程度)の後、発熱やのどの痛みなど、インフルエンザの症状が現れます。これを感染(発症)といいますが、残念ながら、現在のワクチンには感染を完全に抑える働きはありません(一定程度の抑止効果は認められています)。
発症後、多くの人は1週間程度で回復します。ただ、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする人や死亡する人も出てきます。これをインフルエンザの「重症化」といい、特に基礎疾患のある人や高齢者では重症化する可能性が高いと考えられています。
インフルエンザワクチンの最も大きな働きは、この「重症化」を予防することです。
国内の研究によれば、高齢者福祉施設に入所している65歳以上の人については、34~55%の発症を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。
インフルエンザワクチン、開発は進行形
インフルエンザは、はるか昔から人類を苦しめてきた病気です。世界で最初の記録は紀元前412年、古代ギリシャの医師ヒポクラテスがインフルエンザ様疾患について記載したものが残っています。
インフルエンザは、何度も世界的な大流行を起こしていますが、ワクチン開発のきっかけは1918年のスペイン風邪によるパンデミックでした。人類史上最悪の流行で、全世界で4千万人以上が死亡したといわれています。
スペイン風邪に衝撃を受けた世界中の研究者は、病気の原因を解明するために研究に取り組み、インフルエンザの予防にはワクチンが効果的であることを解明。まず生ワクチンが開発され、その後不活化ワクチンが主流となっていきました。
ワクチンは3種類
ワクチンは、感染の原因となるウイルスや細菌をもとにして作られます。
製造方法や成分の違いから、「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」の3種類に分けられます。
生ワクチン
病原体となるウイルスや細菌の生存能力はそのままに、毒性を弱めて病原性をなくしたものを原材料にします。弱毒ワクチンともいい、軽く感染した状態になります。
毒性を弱められたウイルスや細菌が体内で増殖して免疫を高めていくので、接種の回数は少なくてすみますが、十分な免疫ができるまでに約1カ月が必要です。そのため、4週間は、次のワクチンを打てません。
不活化ワクチン
病原体となるウイルスや細菌の、感染する能力を失わせた(不活化、殺菌)ものを原材料として作られます。
自然感染や生ワクチンと違って体の中で増えないため、免疫力が弱く、複数回の接種が必要なこともあります。
インフルエンザワクチンは主に不活化ワクチンです。
トキソイド
感染症によっては、細菌やウイルスが出す毒素が免疫を作るのに役立つものもあります。病原体から「毒素だけ」を取り出し、その毒を無害化したものがトキソイドです。不活化ワクチンの一種です。
不活化ワクチン同様、免疫力がつきにくいので複数回の接種が必要です。
主に「破傷風」「ジフテリア」などはこの種類です。
ワクチンの進化の陰に治験バイト
インフルエンザは、ウイルスが気道の粘膜に感染・増殖し、それが発症につながる局所感染症です。もともと、局所感染症へのワクチンの効果は低いとされており、現在、こうした問題を解決すべく世界中の研究者がさまざまなチャレンジをしています。
世界中が待っている、より良い新しいワクチンや新薬が承認され世に出るためにも、欠かせないのが治験(臨床試験)、そして治験モニターです。
治験に参加すれば、交通費や行動制限などの負担を軽減する目的でかなり高額の協力金(負担軽減費)が支払われます。そのため効率の良い「治験バイト」と呼ばれたりもしますが、それ以上に、病気に苦しむ人たちの役に立つ、また医療の発展や治療の進歩に貢献することができる意義のあるボランティアだと誇りを持って参加するモニターも大勢います。
治験についての詳しい情報は公的サイトで公表されている情報もご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html