ウィズコロナの時代に対応。高齢者の治験参加に光
治験の最新形態。在宅でバーチャル治験
新型コロナウイルス収束の見通しは、今も全く立っておらず、次々と変異株があらわれて、さらなる脅威となっています。
とはいえ収束後に再構築されるであろう新たな時代の医療や治験の形が世界中で模索されており、一部ではすでに実現を見ています。
海外では、患者が医療従事者と直接顔を合わせることなく治験に参加する「訪問型・バーチャル治験」が広がりを見せています。
従来の治験
説明 → 同意 → 組み入れ → 投与開始 → ■病院内(頻繁な来院・対面での診察や検査など)
バーチャル治験(在宅治験)
説明 → 同意 → 組み入れ → 投与開始 → ■自宅(オンライン診察「スマートデバイスやパソコン」)・遠隔でのバイタルチェック「ウエアラブルデバイス」)
これまでの治験バイトでは、対面での診察・検査が必要となるなど、頻繁な来院が求められるため、通院できない患者さんや高齢者は治験参加の機会を逃がしてしまうことに。
バーチャル治験なら、ウェアラブルデバイスなどによる遠隔でのバイタルチェック、あるいはオンライン診察を活用することで、治験実施医療機関への受診を必須としない形を作り出すことができます。
在宅治験のメリットは
- 患者さんの自宅、学校または職場に訪問して治験を実施することで、患者さんとその介護者や家族の通院負担を軽減します。
- 在宅での治験なら、一人での通院が難しい方でも治験に参加することができます。
- 在宅医療や介護がすすめば、高齢患者にも治験への参加の機会が増えます。
- 治験モニターの増加が見込めます。また、治験モニターの定着維持率も向上します。
日本でも、在宅治験がスタート?
患者が来院せずに自宅や職場から治験に参加可能な「バーチャル治験」。順調に増加している海外に比べて、日本ではオンライン診療の提供体制が不十分であり、バーチャル治験の実施には時間がかかると見られていました。
そんな中、日本にも注目すべき動きのあることが分かりました。
2018年、某社によって日本初の訪問型治験が開始されたというものです。
「高齢患者に機会を提供」という主旨で開始された訪問型治験、概要は以下のようになっています。
「当社は、医師が治験に参加した患者の自宅を訪問して検査を行い、治験による治療効果を確かめる日本初の訪問型治験を開始しました。
急性期から慢性期へと回復した患者が病院を退院し、在宅での訪問型医療・介護が日本で増えることが予想される中、治験でも患者が来院して行う検査を在宅で対応可能なものについて、訪問型治験に転換させることで、高齢患者などに治験の参加機会を提供するのが狙いです。
現在、中枢神経系疾患領域を対象とした第1相試験を実施中で、今回の結果を踏まえ後期開発相試験への拡大や、将来的にはオンライン診療やデジタル技術を組み合わせたバーチャル治験の実装を検討する構想もあります」
また、新型コロナウイルス蔓延で戦々恐々の2020年、6月27日付けの日本経済新聞に、日本での在宅治験の進展が垣間見える話が紹介されていました。
「新薬の臨床試験(治験)を遠隔で行う『在宅治験』が広がりそうだ。
患者らが自宅で薬を服用し、医師が遠隔で問診したりデータを集めたりする。従来は通院し、院内で投薬や検査をしていた。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐとともに、新薬開発の期間短縮やコスト低減も狙う」
日本でも、いよいよ在宅治験が本格化しそうです。
ウィズコロナの時代に、バーチャル治験・在宅治験を進めないのは患者のニーズに後ろ向きになることでしょう。
今後は、若く健康な人も高齢者も、等しく治験に参加できるよう、来院型治験、訪問型治験、バーチャル治験を柔軟に組み合わせたハイブリッド型治験が主流になっていくと思われます。
治験についての詳しい情報は公的サイトで公表されている情報もご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html